子供が乗る場合でも自転車保険は必要?
ここ数年、自転車で通勤・通学をする人が増えてきたと思います。 自転車はCO2を排出せず、交通費もかからず健康にいいので、素晴らしい乗り物だと思います。
一方で、自転車の事故が多いのも残念ながら事実です。
警察庁のまとめによると、減少傾向にあるものの、自転車関連の事故は年間10万件弱あり、毎日300台近い自転車が事故に巻き込まれています。
また最近では、小学生が自転車でお年寄りに衝突し、意識不明の状態にさせてしまったケースで、小学生の母親になんと9500万円の賠償命令が出された事例もあります。
そこで昨今、「自転車保険」が注目されていますが、そもそも自転車保険って加入する必要はあるのでしょうか? 特に子供が乗る場合でも、わざわざ自転車保険に加入するほどの価値はあるのでしょうか?
答えはズバリ、「補償は必要だが、自動車保険または火災保険の特約(オプション契約)で対応すれば、自転車保険を加入しなくてもカバーされる場合が多いので、自転車保険は不要では?」です。
自転車事故に巻き込まれた時に困ることは以下のようなことかと思います。
<加害者になる場合>
①誰かを怪我させてしまった
②何かを壊してしまった
<被害者になる場合>
③自動車などにより怪我をさせられた
④自転車を壊された
⑤自転車を盗まれた
①~⑤それぞれのケースで自転車保険の必要性を考えてみます。
①誰かを怪我させてしまった
この場合、相手(もし亡くなってしまった場合はご遺族)から損害賠償を求められます。
冒頭で紹介したとおり、最近では非常に賠償額が高額であり、保険がないととんでもない事態になりうる深刻なパターンです。 とはいえ、自動車保険や火災保険の特約(オプション)である「個人賠償責任保険」で対応できますし、保険料も数百円とかなり安いです。
また相手との交渉も保険会社が代行してくれる「示談交渉サービス」がついているケースもあります。 加害者の立場で被害者と交渉するのは非常に辛いことになりますので、必ずつけておきたいサービスです。
さらに、お子さんに一切非がない場合、保険会社は法律的に示談交渉ができない場合があります。 その場合は弁護士に依頼できますが、当然高~い費用がかかります。その費用を補償してくれる「弁護士費用特約」も自動車保険や火災保険で加入できるケースが多いです。これもつけておくとベストでしょう。
つまり、自転車保険ではなく、自動車保険または火災保険の「個人賠償責任保険(示談交渉サービス付き)」、にオプション加入すれば問題ないですし、保険料も抑えられると思います。 さらには「弁護士費用特約」にオプション加入すればベストです。
加入している保険代理店によっては、事故を起きた時にいろいろなアドバイスをしてくれる可能性もあります。ネットなどで自転車保険に加入した場合はこういったサービスは受けられません。
ちなみに自転車保険に加入するとこの「個人賠償責任保険」がついてくる、というタテツケですので、要は同じ保険なら自動車保険や火災保険で入った方がお得、ということかと思います。
②何かを壊してしまった
この場合は①と同様です。個人賠償責任保険があれば、たいていカバーできます。
で、個人賠償責任保険は、自動車保険や火災保険で入ったほうがお得(なことが多い)、ということです。
③自転車などにより怪我をさせられた
これも非常に心配なケースですよね。ただ、お子さんが事故で怪我をさせられた場合、実際問題としては様々なカタチで補償が受けられます。
まずは「事故を起こした相手に賠償してもらう」。
相手が自動車であれば、自動車保険でカバーされています。自賠責保険、いわゆる強制保険でも、人を怪我させた場合は補償しますので、相手に非がある場合は、相手の保険で補償されます。
相手が逃走してわからない、またはお子さんに非がある場合は、医療費は自己負担になります。 ただ、お子さんの医療費は自治体にもよりますが、かなり手厚い優遇がされているため、それほどかからないケースが多いのではないでしょうか? また傷害保険や学資保険、医療保険に加入されていれば、保険が使えます。学資保険や医療保険は入院しないと保険は使えない事が多いですが、入院をしない程度の怪我の治療費のために、保険を入る必要はあるかというとちょっと疑問です。
意外と知られていないのが、小学1年生に配られる「黄色いワッペン」。実はアレ、なんと傷害保険がついてます!小学1年生の時だけが対象ですが、意外に保険にいつのまにか入っていることもあるのです。
つまり、怪我をさせられた場合を心配して自転車保険に入るメリットはあまりない、と思います。
④自転車を壊された
こちらも相手に非があり、かつ自動車であれば、相手の自動車保険で補償される可能性が高いです。
ただ、相手が任意保険に加入しておらず(意外に多いです)、強制である自賠責保険しか入っていない場合、モノの被害は補償されません。その場合は損害賠償請求をすることになります。
なおお子さんに非がある、または相手がわからない(またはいない)場合、自転車保険に加入しても自転車の損害は補償されません。
つまりこのケースでは自転車保険はまったく役に立たないのです。自転車保険だけでなく、どんな保険でも残念ながら、このケースでは補償されません。
⑤自転車を盗まれた
事故とは少し色合いが違いますが、高い自転車に乗っている場合は特に心配になりますよね。
残念ながら、一般的な自転車保険では盗難も補償されません。 盗難を補償してもらうためには、かなり高額の自転車盗難保険に入る必要があります。
例えば「ちゃりぽ」などでは、保険料が1年間で、自転車価格の7%を払う必要があります。 この保険に入るべきかは考え方次第です。5万円の自転車なら3500円かかるので、個人的にはかなり高いと思いますが。。逆に1万円の自転車で700円の保険をかけるかというと、、安いですけど、保険をかける程の自転車じゃないしなあ、、という感じになってしまいます。 それよりもU字ロックなど、頑丈な鍵にお金をかけたほうがいい気がします。
いずれにせよ、一般的な自転車保険では盗難は補償されないので、盗難のために自転車保険に入る意味はありません。
なお火災保険で「家財(家具や電化製品など家以外の財産」を補償の対象にしている場合、自宅の敷地内で盗難されたら、補償されることがあります。
以上を踏まえると、自転車保険は①②③のケースで役に立つとはいえ、
①②は自動車保険や火災保険のオプションの方がいろいろお得、 ③はそれほど高額にならないし、学資保険などでカバーできることもあるのでわざわざ入る必要性は薄い、 ④⑤は自転車保険は役に立たない ということになり、自転車保険に入る必要性はあまりない、という結論です。
なお自転車関連の事故で一番多いのは「出合い頭の事故」ですが、この理由として 挙げられているのが、「自転車で道路を右側通行する」ことです。 右側通行していると、右から出てきた自動車(左側通行)に即ぶつかりますので 非常に危険です。 自転車は左側通行をお子さんにも徹底させましょう。
またヘルメットも必須です。 お子さんが嫌がるかもしれませんが、自動車でシートベルトをしないくらい、危険な行為です。 左側通行とヘルメット着用、これが事故に遭わないための「ベストな自転車の保険」、だと思います。